Princeton: Richard Thompsonコンサート

リチャード・トンプソンはkameにとって特別な存在だ。iTunesライブラリには500曲近く入っているし、last.fmのチャートでも一位のトム・ウェイツに追いつきそうな勢いだ。シンガーとしてはどちらかといえば恵まれていない人だが、ギタリストとソングライターとしてはすばらしい。

McCarter theatre前の看板McCarter theatre前の看板

そんなリチャードおじさんを最初に観たのは渋谷のライブ・イン、Loudon Wainright IIIと組んでのツアーだった。ラウドンのステージ中にこっそり舞台裏から出てきてラウドンの写真を撮ったり、アンコールを10回ほどやってから「ヘリが待ってて渋滞になっちゃってるから」とTear Stained Letterで締めくくった今や伝説のライブだ。本人も楽しかったのか翌年早速バンドを連れて来たのだが、その時は会場が大きいし、本人の体調も今ひとつだったようでライブ・インほどの感動はなかった。

2009年10月、マンハッタンの小さなクラブ"City Winery"で2晩連続、リクエストオンリーのギグがあることを知ったのは確か5月頃。チケットも発売になっていなかったし、そもそもNYにいるかどうかも怪しかったからしばらく静観することにし、しばらくして見に行ったら既に完売。その頃にはNYに来ないアーチストも意外と郊外の町でライブをやることが多いということに気がついていたので(ツアーに東京での公演を入れず、例えば高崎や宇都宮だけにするなんてことはありえない)、慌てて周辺をチェックしたらありました、TarrytownとPrinceton。どっちも電車で1時間ほどかかるが、Tarrytownは既に良い席がなく、必然的にプリンストンになった。あの大学のプリンストンがニュージャージーにあるとは知らなかった。とにかくそこにリチャードおじさんが来る。

会場のMcCarter theatreは大学の施設だからか、料金がけっこう安い。それに会場が広いせいか、あるいは若者の関心が低いのか、わりと良い席がまだ取れる。早速オーダーを入れてチケットが郵送されてくるのを待つことにした。

10日ほどしてMcCarter theatreからメールが来て、チケットが宛先人不明で返送されてきたという。確かに今までも郵便が配達されていないのではないかという疑惑はあったが、よりによってこんな大事なものが不達になったら困る。とりあえずチケットはボックスオフィスで保管してもらって当日受け取ることにした。

Newarkの空港を別とすれば目的を持ってNJに行くのは初めて。ペンステーションから電車に乗るのも初めて。早めに出て通勤客とともに電車に揺られ、Princeton Junctionで支線に乗り換えてようやくプリンストンの駅に到着。McCarter theatreは駅の真正面だ。kameの少年時代を思い出させる古そうな建物の並ぶ大学のキャンパスをぶらぶら抜け、プリンストンの町へ。Olivesで腹ごしらえをして、再びMcCarter theatreに戻った時にはもう真っ暗。

McCarter theatreMcCarter theatre

これからコンサートがあるにしては人も少ないし静かだ。古い建物だがゆったりして待っている人たちはおとなしくホールでぶらぶらしたりカフェでビールを飲んだりしている。年齢層が高くてlulunとkameは確実に平均年齢の引き下げに貢献している。こんなことも珍しい。

McCarter theatre内部McCarter theatre内部

図面で見た印象よりも会場はこじんまりしている。それでもブロードウェイの劇場と比べるとゆったりしていて窮屈な感じはない。なかなか良いところだ。

席から見たステージ席から見たステージ

席はステージ左の方。マイク一本だけのシンプルなステージと、右手の方にちらっとバックステージが見える。8時を回った頃には会場は満席になり、ついにリチャードおじさん登場。黒い服とベレー帽、それにギター。にこっと笑った顔を見て、あーよかった、元気そう、と一安心。実は最近のリチャード・トンプソンの映像で、タクシーの中で”Remember O Thou Man”をやっているのを見て、あーあ、歳取ったなあ、とちょっと心配していたのだ。だからこそ今回を逃すわけにはいかなかった。

最初の曲はほろ苦くも美しい地味な名曲、"I Misunderstood"。途中いろいろなギャグを交えながら"I Want to See the Bright Lights Tonight"、"Wall of Death"、"1952 Vincent Black Lightning"という定番どころや、"Johnny's Far Away"や"Woods of Darney"という渋いチョイスを演奏し、アンコールの最後には観客のリクエストに応えて"Who Knows Where The Time Goes"で締めくくり。曲の良さもさることながら、ギター一本のチューニングを変幻自在に操るのはさすがだ。それに歌もうまくなっている。

時計を見たのは会場が明るくなった9時50分 。5分後の電車に乗るべく急いで会場の外に出て、余韻に浸りながら電車に揺られて12時には帰宅。疲れているし眠いのだけど二人ともなかなか寝付けなかったのはそれだけ興奮していたからか。

一夜明けて、最近のリチャードおじさんのライブは聴けないものか、と探してみたら2ヶ月前のFairport Convention Festivalでの録音を発見。そのうちじっくり反芻しよう。

City Wineryのギグを見逃したのは残念だが、元気なリチャードおじさんをもう一度見ることができたのは幸せなことだ。なんでもプリンストンにはもう15年ほど連続で来ているそうなので、もし来年も機会があったら絶対見に行く。