Batt to Bear(その2)

Batt to Bearのさわりを走った2週間後、Camp Smith Trailを歩いた翌週末は珍しく穏やかで快晴になるという予報だった。北の方はもう紅葉が終わりかけているはずだが、このところの暖かさで持ちこたえているかもしれないし、こんな快適な日は春まで来ないと踏んで残りのBatt to Bearに挑戦することにした。

imgp1372.jpgGeorge Washington Bridge マンハッタン側、南側の自転車/歩行者道入り口

週末なので地下鉄の運行状況を確認した上で7番、1番を乗り継いでGeorge Washington Bridge近くの181st St駅へ。橋は南北両方に歩行者/自転車用通路が設けられているが、通常開いているのは南側のみ。チャリダーたちの流れを追っていくと橋への登り口があった。

George Washington Bridge上から南を見たところ。紅葉がきれい、遠くにマンハッタン。 George Washington Bridge上から南を見たところ

橋の上からは下の公園の紅葉がきれいに見える。はるか彼方にはマンハッタンのビル群。この角度は新鮮だ。

George Washington Bridge George Washington Bridge

橋の上は低い手すりがあるだけで高所恐怖症の人にはちょっとつらいだろうが、そのかわり眺めは申し分ない。

George Washington Bridgeからの眺め George Washington Bridgeからの眺め

橋を渡って進路を北に取る。ネットで見つけた地図を見ながらハイウェイに沿った9Wを行くのだが、川辺のHenry Hudson Driveへ出る道が見つからない。地図に記されている地点よりだいぶ進んだところでようやく右へ行ける道があったが、自転車は通行禁止になっている。どうやら急坂で危険だということらしい。下の方を見るとかなりの高度差があり、確かに川沿いの道をすいすい走っている自転車が見える。そろりそろりと坂を降りると、川に沿って木立の中を北に向かう道があった。旧道なのかもしれない。

imgp1380.jpg Henry Hudson Drive沿いの紅葉

車はほとんど通らないし、通るのはゆっくり走る観光客の車だけ。自転車の方が圧倒的に多い。それもそのはず、紅葉の中、ハドソンの水面と向こう岸のマンハッタンの景色を眺めながら実に快適に走ることができる。こりゃいい道だ、無理矢理降りてきて正解だった、と喜ぶ一方、地図がいいかげんだったことに多少憤りを感じる。ちゃんと予習していなかったのも悪いが、こんな地図があったら信頼できるものと考えるのが普通だろう。あとでiPhoneで調べたらGeorge Washington Bridgeを渡っていったん左に曲がるとHenry Hudson Driveの入り口に行けるようだ。

Henry Hudson Driveにあった滝 Henry Hudson Driveにあった滝

マンハッタン側から見たハドソン西岸は崖に見えるし確かに崖なのだが、こんな良い道が隠されていようとは。途中滝などもあったりして(崖なのだから当然といえば当然)けっこう楽しめる。新緑の時期にもきれいに違いない。

Henry Hudson Driveを出て9Wに入ったあたり Henry Hudson Driveを出て9Wに入ったあたり

しばらくすると崖を斜めにトラバースする長い上りがあり、公園の管理事務所前を通って9Wに合流。このあたりの9Wは路側帯が広くて走りやすい。ここも両方向に向かうロードバイクがたくさん。

地図によるとこの先を右に入り、Tallman Mountain State Park内の自転車道を進むことになっている。ちゃんと曲がり角は発見できたし、自転車道に通じているはずの道を進んだら木立の中の住宅地で、その先には豪邸があって行き止まり。違う道かな、とそのあたりを探したが公園の入り口が見当たらない。変だなあ、と思っていると急坂を降りて川辺に到達。Snedens Landingというところらしいが、ちょっと通な高級住宅地で有名人も住んでいるらしい。なるほど、と思わせる雰囲気がある。

仕方ないので9Wに戻って北を目指す。分かれ道からちょっとのところになんてことはない、公園内の自転車道入り口があった。ちぇ、と思いながらもだいぶ時間をロスしたのでそのまま道路を走る。

Snedens Landing。Tallman Mountain State Parkに入れず、手前の道を川辺まで降りたところ。遠くにTappan Zee Bridgeが見える。 Snedens Landing、遠くにTappan Zee Bridgeが見える

ここからPiermontという小奇麗な村を通り過ぎ、川辺の住宅街を北に進む。Piermontの街のたたずまいを見ればわかるが、このあたりは金持ちが住むエリアだ。走っていると笑っちゃうぐらい立派な家が行けども行けども連なっている。

Nyack Beach手前の豪邸 Nyack Beach手前の豪邸

面白いことにTappan Zee Bridgeを通り過ぎてNyackに入るともうちょっと普通の街になる。このあたりのわかりやすさがアメリカ的だ。

Nyackでお昼を食べ、またもや住宅街の中を北に進む。交通量が少なくなったな、と思ったあたりで前方に絶壁が登場。

Nyack Beach手前の絶壁 Nyack Beach手前の絶壁

この時はすごい崖だな、と思ったけどこの先はもっとすごかった。Nyack Beachの狭い駐車場は車があふれている。川沿いのHook Mountain/Nyack Beach Bikewayを散歩しにきている人たちだ。やはりこんなに天気がよくて暖かい日はもうないと思ってみんなやってきているのだろう。

Nyack BeachのHook Mountain/Nyack Beach Bikeway入り口 Nyack BeachのHook Mountain/Nyack Beach Bikeway入り口

自転車道だが太いタイヤのみ可、とされているのでロードバイクは来ない。ほとんどが歩きの人でチャリダーは数えるほどだ。眺めを楽しみながら水辺の風に吹かれて気持ち良く走ることができる。

imgp1390.jpg Hook Mountain/Nyack Beach Bikeway

しばらく行くと路面は落ち葉に覆われたダートになる。ロードバイクには無理だが、路面の状態は良好なのでkameとlulunの折りたたみチャリでも楽勝だ。ふと上を見上げると陽が傾き始めていて紅葉がきれいだ。

Hook Mountain/Nyack Beach Bikeway 日差しが傾いて紅葉がきれい Hook Mountain/Nyack Beach Bikewayの紅葉

途中一カ所だけエスケープルートがあって、そっちに行くとRockland Lakeという湖があるらしい。そっちの駐車場から歩いてきている人も多いようで、この分かれ道を過ぎると明らかに人影が少なくなる。

imgp1394.jpg Hook Mountain/Nyack Beach Bikeway沿いの絶壁

このあたりは左側にものすごい絶壁が見える。入り口あたりにロッククライミングは厳禁、と書いてあったが無理もない。写真に撮ったのはかなり低くなったあたりで、実物はこんなもんじゃない。まさに立ちはだかる屏風のようだ。

imgp1395.jpg Hook Mountain/Nyack Beach Bikeway、Haverstraw側の入り口

かなり進んだところでHaverstraw側の出口に到着。ここで小休止をしてさらに進む。大きなセメント工場(?)前を通過し、アウトレットパークと間違えそうな安っぽいコンド群を横目で見ながらHaverstrawの街に入る。ここは対岸のOssiningからフェリーが来ているので、船と電車でマンハッタンに通勤できるというわけだ。それで安そうなコンドが建っているのか、と納得。

さらに町中に入ると、まるでハーレムが引っ越してきたかのようなチープでラテンな街が広がっていってびっくり。Piermontとはまるで雰囲気が違う。これまた実にわかりやすい。

ここから先はStony Pointでまた少し道に迷い(地図が悪い)、あとはひたすら9Wを北上。Bear Mountainの手前、Dunderberg Mountainが東に張り出している岬がJones Pointで、ここからはまた川辺の小径を進めるようになっている。

Jones Pointまで行ってみると確かに道はあるのだが、狭いし草が茂っていて走りにくそう。もう夕方だし体力も消耗しているので9Wに戻って道路を進むことにする。しばし休憩して夕日に映えるハドソンを撮影。

Jones Pointから見た夕暮れのハドソン、Peekskill方面 Jones Pointから見た夕暮れのハドソン、Peekskill方面

Jones Pointから見た夕暮れのハドソン、左の方にBlue Mountain Jones Pointから見た夕暮れのハドソン、左の方にBlue Mountain

道路は岬のだいぶ上を通る。だいぶ薄暗くなってきた中、最後の難所にチャレンジ。登っている途中、道路脇の塀の向こう側でがさがさする音がしたと思ったら、いきなり犬が吠えながら飛び出てきてkameの足下でさかんに騒ぐ。うわ、これは昔lulunが犬に襲われた時と同じパターンだ、と振り返ると、飼い主が呼び戻したらしくlulunは襲撃を受けずに済んだようだ。こんな上り坂だとさすがに逃げ足の速いlulunでも無理だろう。

今度は前を走る車が急に減速したと思ったら鹿が道路を横切ったらしい。目撃地点にたどりつくと薮の中に若そうな鹿が一頭見える。薄暗いがなんとか撮影に成功。

Dunderberg Mountainの峠あたりで見かけた鹿 Dunderberg Mountainの峠あたりで見かけた鹿

そういえば走っている間、道路脇に車にはねられた動物の死骸がたくさんあった。リス、野ネズミ、ハリネズミは数えきれないほどあったし、鹿とスカンクらしき黒白の毛皮の動物もいた。道路に出ている「鹿注意」の標識は本当だ。こんな勢いではねられているのなら、鹿に生まれても死ぬ時は人間と同じ交通事故、ということになっているのではないか。そのうち熊を見ることもあるかもしれない。

imgp1404.jpg 黄昏のAnthony's NoseとBear Mountain Bridge

峠を越えるとついにゴールのBear Mountain Bridgeと先週登ったAnthony's Noseが登場。辛うじて陽が沈む前に拝むことができた。右側にIona Islandの湿地を見ながら長い坂を下り、再度上り坂になってしばらくすると見覚えのあるBear Mountainの交差点だ。去年はオクトーバーフェストで賑わっていたが人影もまばらだ。暗くなったのでライトを装着してさらに走る。

夕日を浴びたAnthony's NoseとBear Mountain Bridge黄昏のAnthony's NoseとBear Mountain Bridge

Bear Mountain Bridgeは両側に歩行者/自転車動が設けられている。橋の上でしばし記念撮影。できれば陽が沈む前に着きたかった、と切に思うがまあ仕方がない。黄昏時もまたいいもんだ。

Bear Mountain Bridgeからハドソン上流方向、Sugarloaf Hillが見える Bear Mountain Bridgeからハドソン上流方向、Sugarloaf Hillが見える

Bear Mountain Bridgeからハドソン下流方向 Bear Mountain Bridgeからハドソン下流方向

そうこうしているとハドソン川西岸を走る貨物列車の音が聞こえる。隠れ鉄子のlulunは喜んでBear Mountainをバックに走る列車を撮影。アメリカは旅客と貨物を違う線路で運んでいるので、残念ながらこの線を乗ることはできない。

Bear Mountain Bridgeから、ハドソン西岸を走る貨物列車 Bear Mountain Bridgeから、ハドソン西岸を走る貨物列車

さて、それじゃPeekskillへ向かうか、と思って行く手を見ると、長い上り坂を車のテールランプが連なって登っている。あっちにはあまり行きたくないな、と思ってふと思いついた。確か5時過ぎにManitouに停車する上り列車が来るはず。今何時?とlulunに訊くと4時45分。よし、Manitouに降りよう、と決め、橋を渡ったところで左折。ちょっと行ったら先週通ったAppalatian Trailの登り口があり、車がたくさん停めてある。まだ歩いている人がいるようだ。

先週来ているのでまだ記憶が新しい。線路の方に降りる道があったので一応iPhoneで確認。時刻は5時ちょうど。ここだ、と急な砂利道を義経のように下り、Manitou駅に着くと同じ列車を待っている人たちが二組ほど。一組はチャリダー、もう一組はポーランド人らしきハイカーのおばちゃんたち。今日はよく走ったね、と整理体操をしながら待っているとなかなか列車の音がしない。まあこれだけ人が待っているから来ないことはないよな、と思いつつ、万が一来なかったらGarrisonまで行くか、おばちゃんたちはどうすんだろ、なんてことをぼんやり考えていると遠くからディーゼルエンジンの音。なにしろホームがないので疲れた体でチャリを持ち上げるのは楽ではないが、車掌が手を貸してくれてなんとか乗り込んだ。Breakneck Ridgeにも停車するせいか、かなり混んでいる。

Grand Centralに着くと、lulunは家まで走って帰るつもりらしい。散々走った後だから当然地下鉄に乗ると思っていたkameはびっくり。話を聞くと単に地下鉄に乗ることを思いついていなかったらしい。「うん、確かにQueensboroを越えるのはちょっとね」なんて言ってる。というわけで一駅だけ電車に乗り、久しぶりにKarczmaでうまいビールでも、と覗きに行ったら恐れていた通り満員。やっぱり、まあ次回にしよう、と標的をPapacitosに切り替え。幸いPapacitosは混んでいなかったので夕食にありついて無事帰宅。走行距離は80kmほどだろうか。よく走ったが天気がよく、変化に富んだルートだったので実に楽しかった。次回は道を間違えることはないだろうし、春になったら行くか。

(注)地図は一部(NyackからHaverstrawまで)実際に走ったコースとは異なっている。


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